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「渦中の花」インタビュー第6回(全9回)山本佳希×今井由希(柿喰う客)

記者の辻本です。

「渦中の花」関連インタビュー、第5回と第6回は「客演編」と称し、room42の作品に彩りを添える4人の役者さんに焦点を当てていきます。

後編となる今回は、山本佳希さんと今井由希さん(柿喰う客)にお話をうかがいます。


●役者以外の経歴を持つ二人


——まずはお二人の経歴について教えてください。

山本佳希(以下、山本):芝居自体は高校生からやってるんですけど、1988年にハラホロシャングリラという劇団を旗揚げしまして。コントなんかもやっている劇団だったので、外に向けてコントを見せようということで、劇団内でユニットを組んでお笑いのライブに出たんですよ。そしたら人力舎から声がかかりまして、そこからしばらく、20代の間は人力舎所属の芸人として活動していました。

今井由希(以下、今井):知らなかった…

山本:バラライカという3人組で、同期にあたるのはホンジャマカとか、さまぁ〜ずとかデンジャラスとか…いわゆるボキャブラ世代なんですけど、僕たちはお芝居みたいなコントをやっていたので、当時のテレビが求めていたようなお笑いは不得意だったんです。それで芸人をいったん辞めて、劇団のほうを大きくしようと。紀伊國屋ホールでやったりして20年くらい続いたんですけど、ちょうど10年前くらいにハラホロシャングリラが休止になって、それ以降はフリーでお芝居をやっています。野村くんと「はらぺこペンギン!」で共演して、そこで誘われて今に至ります。

今井:私はお芝居を始めたの自体は中学生なんですけど、地域の児童劇団ですごく上手い子がいて、「(こんな子がいるなら)私にはお芝居なんて無理だ!」と思ってしまったんですね。そこからはスタッフをやろうと思って、舞台美術の学校に入りました。もう役者をやるつもりは全然なくて、日本とイギリスを行き来しながら6年間、演出部だったり制作部だったり衣装だったりをいろいろ勉強していて。それで、22くらいの時についた座組で「なんでスタッフやってるの?」という話題になったことがあったんですよ。そのときに「なんか(役者は)無理だと思っちゃったんですよね」って話をしたら、その人がその後3週間くらい、顔を合わせるたびに「君は演者になったほうがいいよ!」って言い続けてくれて。


左から今井由希、山本佳希。


今井:本当はずっとやりたかったことだし、その言葉で決意したというか。もう一度だけ役者をやってみて、向いてなかったら辞めようと。それで大学を卒業してから事務所を探したりして、25歳で女優をはじめたんです。最初は1年で終わりかなと思っていたんですけど、(オファーの)お話をいただいたり、ずっとモチベーションは高かったのでそのまま続けることができて。それで去年、ずっとスタッフで付きたいと思っていた柿喰う客の俳優部オーディションを受けて、今は俳優として所属しています。


●今までにない配役


——自分の役の印象はどうですか?

今井:髪型とか見た目のせいでもあるんでしょうけど、今までは静かにメンがヘラっていく役か(笑)、柿喰う客みたいに前を向いてハキハキしゃべる役か、どちらかに二分されていたんですよ。けど今回はそうじゃない役をいただけたので、新しい反応が生まれそうです。

山本:ずっとコメディの畑にいるので、今回のように寡黙で怖い役というのは、あまり客演先でも振られることが少なくて。どこ行っても「おもしろおじさん」の枠だったんですよ(笑)。もともと若く見られるタイプでもあったし、若い役が多かったんですけど、ここ数年は呼んでくれる側の劇団も若くなってきた。そうなると、どうしても自分のほうが歳上なので、お父さん役だったり「怖い人」ポジションの役を求められることが最近は増えてきたから…あ、いいなって思うんです。

——タイミング的にちょうどよかったということですか?

山本:タイミングもそうだし、できる役の振り幅が大きい方がいいなと思って。そうそう、これの直前までやっていた舞台が140分間の三人芝居で、ものすごい台詞量だったんですよ。とにかくずっとしゃべり続けているお芝居だったので、今回の台本をもらったとき「これだけでいいの?」ってなりましたね。20分の1くらいの台詞量なので、なんだか楽をしているような気分になって(笑)。

——今回のも決して出番が少ないわけじゃないと思いますが…

山本:と思うんですけどね。前が出ずっぱりだったから、多い少ないの感覚じゃなくなっちゃってるんですよ。落差が大きすぎて。



——今までに出演してきた他の舞台と比べて、烏丸さんの演出はいかがですか?

山本:実は僕、女性の演出家と一緒にお仕事するの初めてなんです。脚本家が女性だったことはあるけど、演出ではなかった。

今井:私も初めてかもしれない。スタッフで付いたことはありますけど、そのときは言語が英語だったし、むこう(海外)のやり方でやっていたので。佐藤佐吉演劇祭の期間中も、「劇場職員の烏丸さん」とは毎日のように会っていたんですけど、牡丹茶房の作品はずっと見そびれていたんですよ。

——まだ作家・演出家としての顔は知らなかったんですね。

今井:この人はどんな脚本を書いてどんな演出をするんだろうと、ずっと思っていて。だから稽古に参加して台本をもらって、「そうか烏丸さんってこういうテイストで来るんだ、なるほどね」というフィックスをしている最中です。うまく言葉にできないんですけど、なんとなく想像していたものとは少し違っていたから、そこも楽しみで。あと、穏やかな感じで(稽古を)進める人なんだとわかってホッとしています。

山本:けっこう怖い話だからね。

——それは皆さんおっしゃいますね。怖い話だから怖い稽古場なんじゃないかって。

今井:前にオペラの演出家さんで女性の方に付いたことがあるんですけど、その時はヒステリックというか、物は投げるし金切り声は上げるしで、あんまりいい思い出がなかったんですよ。だから、こんなに穏やかに進むんだーって安心しました。


●積極性で進む稽古


——お二人は劇中では役同士あまり絡まないようですが、お互いのことを役者としてはどう見ていますか?

山本:僕は本名が今井なので、今井さんって呼ばれると「えっ?」てなります。

今井:まぎらわしい…

——そういえば「山」と「本」と「丸」が多いですよね、今回の座組。

山本:いや、まあそれだけなんですけど(笑)。今井さんに限らず、みんな積極的だなと思いながら見ています。自分のいた劇団でも若手の子たちをいっぱい見てきて、あんまり積極的じゃなかった印象があるから、若い人たちってそうなのかなと思っていたんです。でも今回、前のめりで役と向き合いに行ってるように見えるので…いや、全然悪いことじゃないんですよ。

——演出の指示を待つだけじゃなくて、自分からプランを持ってくるみたいなことですか。

山本:そう、最初からいろいろ試してくるなと。変に遠慮しながらやってるような感じが全然ないので、頼もしいなと思いますね。僕はみんなの出方を見ながら、自分のポジションを作っていこうかなという感じです。

今井:私は山本さん、稽古中もついつい見てしまうんですよ。目が行ってしまう。何がそうさせるのかとか、あんまり分析したわけじゃないんですけど、ただとても居住まいが素敵だなと。

山本:ありがとうございます。


今井:烏丸さんの書く言葉は、女性の持ってるイヤな部分を絶妙に突いてくるので、いいなあって私は思います。私は宮山さんの役の台詞が上がってくるたびに「ほぉー…」となっていて(笑)。「わかるわかる」って。自分たちの内側もガリガリ削って、ガリガリ消耗させながら作っていきたい。お客さんも同じくらい消耗すると思うし、真綿で首を絞められていくような作品になればいいなと思います。

山本:台本は最後までできているので、全体的な流れは読めばわかるんですけど、読んだだけではあまり起伏が見えないというか、のっぺりしている印象を受けたんです。それぞれの人物が抱える変化であったりとかが描き込まれていくと、もっと色濃く見えてくるものがあるはずだと思います。

——まだ隠されている部分がある、ということでしょうか。

山本:演出がついて初めてわかるようになる部分もあるし、照明や音響が入るとまた違って見えてくるでしょうし。これから演出がついていくシーンも含めて、本番に向けてどんなふうに変わっていくかが楽しみではありますね。


第7回は、room42のメンバーが出会ったワークショップの助手を務めてくださった、植田真介(文学座)さんと、room42のメンバーとの対談です。

当時の思い出を語りつつ、今と7年前の変化などを語っていただきました。

公開は、4/20(金)を予定。

お楽しみに!

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