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「渦中の花」インタビュー第5回(全9回)丸本陽子×宮山知衣(On7)

記者の辻本です。

「渦中の花」関連インタビュー、第5回と第6回は「客演編」と称し、room42の作品に彩りを添える4人の役者さんに焦点を当てていきます。

まずはその前編、お話をうかがうのは丸本陽子さんと宮山知衣さん(On7)のお二人です。


●辻井彰太おすすめの二人


——まずはお二人の経歴について教えてください。

丸本陽子(以下、丸本):子どものときから英語劇などをやっていました。玉川大学の演劇専攻で学んだあと、一度社会人になったんですが、結局お芝居の世界へ戻ってきました。ずっと劇団には所属せずにフリーで活動していて、先日junksharpというところで4人芝居をやったんですが、そこで辻井くんと共演して声をかけていただきました。

宮山知衣(以下、宮山):テアトル・エコーという劇団がありまして、そこの放送映画部という、劇団とはまた別の事務所に所属していました。ただ、そこは声の仕事がほとんどで、舞台の仕事はなかったんですよ。その前は青年座の研究所にいたんですけど、そこで出会った人たちが立ち上げた女優7人だけの「On7(オンナナ)」という団体に2011年から参加しています。辻井くんとはオフィスコットーネのお芝居で共演して知り合いました。


左から宮山知衣、丸本陽子。


——お二人とも辻井さんのご紹介ということですね。辻井さんは、他にもたくさん役者の方をご存知だと思うんですが、その中から共演者としてこの二人を選んだ決め手は何だったんでしょうか。

辻井彰太(以下、辻井):まずは単純に、実力が高いというのが第一条件でしたね。それと、作品の雰囲気的に殺伐とした現場になる可能性もあると思ったので、優しい人を呼ばなきゃなというのがあって。

丸本:あ、そういう意味か。ありがとう(笑)。

辻井:丸本さんは優しいけど自分の意見をハッキリ言ってくれる人なので、場の空気に緩急をつくってくれるはずという期待がありました。若い座組でもあるし、ちゃんと経験や知識のある人がいてくれれば芯の通ったいい空気も生まれるだろうと。あと、今回どういうお話になるかという概要は聞いていたので、この中ならお母さん役にはピッタリじゃないかなと思ってオファーしました。

——宮山さんに関してはいかがですか?

辻井:まず第一に芝居を見ていてもわかるんですけど、すごく気づかいをしてくれる人なんですよ。

宮山:いやいやいや…される側だよ…

辻井:今回の稽古でもそうなんですけど、ベストな空間を作ってくれるんです。自分だけのベターな位置取りじゃなくて、シーン全体を成立させるには自分がどうしたらいいかというベストを解ってくれている人なので。そこまで場を冷静に見て判断できる役者さんって貴重だと思うんですよね。そういう人が一人でもいると、僕らも学べることがあるし、僕らだけじゃ出来ないことができるようになるから。あと…

丸本:ホメ殺しだねこれ。

宮山:ホメ殺しだ。

辻井:いやいや(笑)。烏丸さんの作風を見ていて、傷つき傷つけあう人たちが多く出てくる印象があったんですよ。宮山さんは気づかいの人だから、逆に言えば人がどうされたら傷つくかというのを解っている。本当に人を傷つけることができるし、自分も同じように傷つくことができるという、ある意味で「タフじゃない」役者だからこそ今回の作品にうまくマッチするだろうなと思ってオファーさせていただきました。。

——ありがとうございます。お二人とも、すごい面持ちで聞かれていましたけど…

丸本:一生分ほめられた。

宮山:(言い聞かせるように)私は気づかいができる…



——今までに出演してきた他の舞台と比べて、烏丸さんの演出はいかがですか?

宮山:私は初めてお会いするし、牡丹茶房も拝見したことないんですけど、こちらがあまり「ん?」って引っかかることのない理路整然とした言葉をくれる。前に公開された烏丸さんのインタビュー記事を読んだ時も思ったんですけど、本当に自分の作品や登場人物を愛している人なんですよね。「自分の家族のことだから何でも知ってるし話せるよ」みたいにして(作品のことを)言ってくれるから、それが心地いい感じの人だなって印象がありますね。

丸本:「こうしてほしい」という、求めているものを的確に言語化していただけるので、そこはとてもやりやすいです。これは、意外にそうじゃない演出家の方も多くいらっしゃるので…

宮山:あと適度に…あの、これはすごい誤解を招くあれかもしれないんですけど…適度に病んでいる感じが好きです。

——適度に病んでいる。

宮山:なんていうんですか、現世とのバランスをうまく取りながら、いい感じでアーティストとして生きていらっしゃる様子が、すごく力強くて頼もしいなと。あ、こういう人いるんだーって。

——それはもう、人間としての興味ってことですかね。

宮山:人間力なのかなあ? まだ全然、会ったばかりだから本当は何もわかってないんですけど。でも自分のもらった印象としてはそうですね。いい感じに病んでいるのが魅力だなっていう。失礼な言い方になっちゃったかな…


●足し算をしない人、予想を裏切る人


——役者として、お互いのことをどう思いますか?

宮山:まず丸本さんの声が好きで。すごく印象的で耳に残る声をしていらっしゃるなと思ったのと、スッとそこにいるだけで異様な空気を醸し出せる人だなっていうのが…これ、ディスってるわけじゃないんですよ。

——わかってます、わかってます。

宮山:声とか出で立ちも含めて、何かあるぞと。この人は何か抱えているなっていうのが、いるだけで伝わってくる。私が新劇の研究所にいたから余計そう思うのかもしれないんですけど、表現過多になりがちな役者さんっているじゃないですか。表現してなんぼみたいな。そうなりがちな人をたくさん見てきたし、自分もその種を持っているであろうことを忌々しく思ってるんですけど…(笑)。「表現」をしたくなっちゃうことってあるんですよ。でも、私はそういうことをしない役者さんが好きだし、それを排除したあとに残るものが好きだから、丸本さんを見て勉強したいなと思います。

丸本:さっき新劇の話が出たので言うと、新劇の演技って基本的に足し算というか「盛っていく」やり方なんですよ。だから表現過多になりやすいのもわかるんですけど、いま世間で…とくに小劇場系だと、こうして普通に話してる様子がそのまま舞台に乗ってますみたいなのが今は主流というか、比率が高くなってきている。それを考えるとやっぱり過剰に見えてしまうんだけど、でもお芝居としてのジャンルが違うだけというか、それはそれで好きな人もいるし、一つの方法でもあるから。逆に、宮山さんは新劇の方法論が根っこにあるからこその足し算引き算ができると思うんですよね。

——たしかに、持っているけど足さないということはできますからね。

宮山:できたらいいんだけどなぁ…

丸本:今回の作品でも、出すところは出していかなきゃいけない側の役だから、その意味ではスキルが役に立っていると思う。自分では忌々しいと思っているかもしれないけど(笑)。


——丸本さんから見た宮山さんの印象はどうでしょう?

丸本:台本を読んでいるときって、自分の役じゃなくてもなんとなく「こう来るかな?」って選択肢がいくつか浮かぶと思うんですよ。でも宮山さんの場合、「おっ、そう来たか!」っていう振幅の広い演技をする方だし、見ていてわくわくしますね。「次は何が来るんだろう?」って。

宮山:そう言ってもらえるのは有り難いのと同時に、そこがコンプレックスでもあって。声の仕事をしていると、映画の吹き替えなんかで、もとの役者さんの声を日本語に翻訳したらこれが正解だよねという、誰もが納得する声色が多分あるんです。でも、ディレクターさんに以前「宮山さんって絶対正解出さないよね」と言われたことがあって、それがすべてを物語っている気がしてるんです。

丸本:それは、予想を超える面白さは要らないってこと?

宮山:うーん…それを面白がってくれた人もいるんですけど、普通はこうなったらこうだよね? ってところを違う方へ行っちゃって、あぁごめんなさい…って思うことがよくあります。

丸本:でも私は逆に、面白味がないという意味で優等生的なことしかできないってコンプレックスがあるから。

宮山:丸本さんが? 信じられない…

丸本:いやいや、待って。ほとんど見てないよね?(笑)

——でも、そう考えると対照的な二人かもしれませんね。互いのコンプレックスを克服しているというか、お互い自分が持っていないものを持っているというか。

丸本:特に女優陣はそうかもしれませんね。全員色が違うから、あとの二人に対しても私は「ここがいいな」とか「うらやましいな」と思う部分がある。ひょっとしたらこれは、役者というものが共通して常に抱える想いかもしれないけど。

宮山:私も稽古見てて面白いですよ。短い期間だけど、すぐにこの座組が好きになりました。

丸本:Twitterにも書いたんですけど、稽古でこれを見ることができるって、なんて贅沢なんだろうと思います。

宮山:素敵な人ばかりの座組だからこそ、いろんなものを本気でぶつけあって創作したいですね。舞台は虚構だけど、人と人のぶつかり合いは嘘のないようにしたい。烏丸さんの見せたいものや、その先にあるものが見えてくるようにするためにも、絶対に雰囲気でやりたくはないなと思っていて。悲しくて救いのないダークな世界観…という表層だけで終わるのはもったいないし、その奥にある、愛されたいとか愛したいといった根源的な感情であったり、人間のやさしさみたいなものがフッと立ち上ってくるようなものにできたら、きっと成功なんだろうなと思います。白い部分があるからこそ黒に飲み込まれることもあるし、相反するものが拮抗しながら生きている。人ってそんなに単純じゃないんだよ、ということを肝に銘じてやっていこうと思っています。


第6回は出演していただく、山本佳希さんと今井由希(柿喰う客)さんに、これまでの経歴、出演のきっかけ、作品の意気込みなど語っていただきました。

公開は、4/18(水)を予定。

お楽しみに!

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