play room第二期参加者インタビュー[後編]
※こちらのインタビューは第三期募集時に作成したものになります。
インタビュアー:國松卓
スピーカー:小川結子さん、河原翔太さん、青柳糸さん(以下敬称略)
―――シーンスタディで扱った作品はトム・ストッパードの『アルカディア』ですよね。
一期の時は、結構もう『アルカディア』の面白さが全然わからない、みたいな人がいたりして、『アルカディア』とは、みたいなトークから入ったりしてたんですけど、二期ってどうだったんですか?
青柳:最初はどうだったんですかね。
河原:結構はっきり分かれてた気がします。「なんか分かんない」って人と「面白かった」って人。
最初に戯曲に入った時、そんなに回数読んでない人と、結構何回も読んだという感じで臨んできた人がいて、何回も読んでるの人の方が面白いって言ってた印象はありましたね。
僕とかはその時点で全然読んでなかったので、「もう何もわからないです」みたいな感じでしばらくみんなの話を聞いて、だんだん「そういう話なんだ、ちょっと面白いのかしら」とか思いながらやってましたね笑
青柳:ちょっと話が遡りますけど、オンラインで戯曲読解やってる時は、同じトム・ストッパードの『ロックンロール』を読んだんです。私はその時まで海外戯曲に全く興味がなくて、初めて読んだぐらいの勢いで、「なんかもう辛かったなー」という記憶しかないんですよ。読解も「こうかなって思います」とおずおず発表するんですけど、「え、そうかな」みたいなこと言われると「ヒー」と萎縮したり。今思えば全く否定はされてなかったんですけどね。勝手に辛くなってた。
それで、「こんなに読めてなかったんだ私」っていうのを突き付けられて。でも皆さんの読解を聞いて、こういう解釈があるんだ、こういう楽しみ方があるんだというのが分かってから『アルカディア』を読むことになったので、その時はもう割と楽しもうマインドで読めたっていうのは大きかったかもしれないです。
だから私は、先に戯曲読解を丁寧にやってたので助かったと思います。いきなり『アルカディア』だけ読んでたらもっと苦しんでたかも知れないなあ。
―――小川さんは何かありますか。
小川:『アルカディア』は私も最初よくわかんなくて。バイロン卿というキャラクターが人殺しをしたとかしてないとか、トマシナとセプティマスの関係性とか、「ちょっといまいち、どうなんだよ」みたいな。
あと私数学がめちゃくちゃ苦手で、序盤に数学用語がたくさん出てきたので、そういう話だと思い込んでるから、私にはわからないみたいな決め付けがあったんです。でも3回、4回と読むと「セリフじゃなくて物語の構造でこんなに感動できるんだ」と思って、それですごく好きになった気がします。
―――うんいいですね。セリフじゃなくて構造で感動できるっていうのが、すごくいい体験だったんだろうなってのが伝わってきて、羨ましい。
青柳:特に女性陣は、もう最後の方なんか「役のことを知りたい欲」がすごく全員高まってて。トマシナ役の人たちだけでZoomで座談会を勝手にやったり、ハンナ役もハンナ会をやったり。別にやってって言われて無いんですけど。「このセリフってこういう解釈じゃねぇ?」みたいなのを話して遊んだりしてました。
―――いいなそれ!一期にはなかったからすごく羨ましいなあ。
小川:私は結局、最後の発表会出られなかったんですけど、トマシナやって組んでたセプティマス役の人とも電話で話して。もう結局いろんな芝居の話とかして4時間くらい電話してました。
仲良かったですよね、みんな。
青柳:クラスメート感があった。
―――いいなあ。羨ましいですね。一期は最初から対面だったんですけど、まだ皆さんスケジュールがあって、通して参加できる人もそんなに多くなかったので。シーンスタディが始まって、発表会が近づいて来たからすげー団結してくるみたいな。二期は自主的にそういう会ができるというのはすごくいい時間だったんだろうな。
play roomは、俳優に資するというコンセプトのワークショップじゃないですか。その訓練の場としてはどうでしたか?例えば参加者の安全が担保されているかみたいなことは。
河原:僕個人としては「安全を担保されてるな」と思ってました。「合わなかったらワークショップ自体いつでも抜けて大丈夫」とずっと言われていて。それはどっちが悪いとかではなく、単純に人によって本当に合わないこともあると思うんで、それがずっとオッケーだったっていうのは結構精神的には良かったと思いますね。
僕なんか演劇に限らず、ついつい「合わないからいいや」と投げ出したりするタイプで。合わないなと思いながら続けていくのはすごくしんどい人もいると思うから、「やめてもいい」という前提があると、自分の意思でずっと参加し続けてる状況が自然と出来てくる。
青柳:実際にリピテーションの段階で「やりたくないことをやらなくていい」と繰り返し言われていました。でも来てるからには何かやらなきゃ、みたいな気持ちで最初はみんな居ただろうけど、「頑張らなくていいしやりたくなかったら帰ってもいい」みたいに言われて。
そういうのが許されてるから、精神的な安全の担保はずっとされていたなと思います。
大人になって、こんなに色々なことが許されるような、泣いても笑っても怒っても、変なことしても、変なこと言っても「そうなんだね」みたいな感じでいられる場って無いなと思いました。
あとは単純に、コロナの感染状況が苛烈になってきた時、どういう風に運営するのか私たちで話し合って決めることが出来ました。例えば途中から、リピテーションやシーンスタディの間マスクをするかしないか問題だったり、シーンスタディが一度終わるごとに手洗いうがいを毎回徹底するとか、そういうルールを野村さんが決めるのではなく、時間を確保して私たちの意見をもとに決めることが出来たので、言いにくい雰囲気とかはなかったんじゃないかなと思いますね。
小川:コロナの関係で連続で開催できなくて、一ヶ月も空いちゃった時に、やっぱり久しぶりだし多少心境の変化もあったと思うのですが、「最近みんなどう?」とざっくばらんに話す場があったので、なんとなく思っていたことを共有出来たというのも大きかったです。
あとplay roomって全員一緒にリピテーションやるじゃないですか。いい意味で安心というか、周りが気になりすぎず、何やっても良いっていうのがあるのかな。リピの時も嫌だったら外に出ても良いし、やめてもいい。他のWSでは一応、やらないっていうのは無しにするみたいなところもあったから、そういう意味では本当にやりたくなければやめられるっていうのは安全面としては良いのかなと思います。
河原:帰っても良いってすごかったですよね。帰っていいんだ!と。その後本当に帰った人がいたので、すごいなあと思いましたね。
青柳:リピ中も頻繁にトイレの方に行ったり、全然やらない人とか結構いましたよね。
―――世莉さんのワークってそういうところが結構自由だから、すごくいいんじゃないかなと僕も思っています。
play roomの1シーズンのカリキュラムについて何かありますか?
河原:基礎が長かったのはすごく良かったなって思っています。
台本に入る前にやること・できることがすごくあるなってことに気づいたので。大抵すぐに台本やセリフに行きがちなんですけど、その前段階のことをしっかり時間かけてクリアできるまでやったのがかなり充実した時間だったなと、僕は思っています。
小川:基礎の時が一番なんかグワって感情を出す場面が多かったから、すごく疲れるし合わない人はそこでやめちゃうと思うんですけど。それがあってからこそのセリフやシーンに取り組めたので、続けて良かったっていうのはすごくありました。
青柳:私も基礎が長かったおかげで「ちゃんとやらなきゃフィルター」がだんだん外れていくのを感じて。
やっぱり台本入る前って挑まなきゃ、取り掛からなきゃ、みたいな気持ちがずっとあって緊張してたんだと思うんです。毎度毎度の稽古をちゃんとやらねば、みたいな思いが強かったんですけど、それを何ヶ月か時間をかけて「どういうスタンスでお芝居に取り組んでいったらいいのかな」っていうのを少しずつ解きほぐせた。
まあ、私は戯曲に入っても「ちゃんとやらなきゃフィルター」全然発動してたんですけど。
でも思い返して、そういえば基礎の時あんなことやったなあ、っていうのを一つづつ取り出せる感じがあったので良かったなと思います。
―――これから三期をやっていくにあたって、こうした方がいいんじゃないかみたいなのって思うことがあったりしますか?具体的にこういう時間がもっと長い方がいいんじゃないかとか。
河原:いや良かったんじゃないかな。台本に入ってからもすぐセリフに取り掛かるんじゃなくて、その前が長かったりしたんで、その構成も含めて僕は好きでしたけどね。
青柳:「最近どう?」タイムはなくさないでほしいです。なくならないと思いますけど笑
―――なくならないですね。「最近どう?」は世莉さんが絶対やるやつなんで。
では、これから三期の募集をかけていきますが、参加する人に向けてメッセージがあれば、お願いします。
青柳:生きやすくなった、気がします。
―――生きやすくというのは?
青柳:お芝居に限らずすごく生きやすくなったなと。なんか宗教みたいだ笑。
でもまあ、何事もちゃんとできる日はできるし、できない日はできないし、それはあってしょうがなくて、じゃあそれを自覚して次の段階に行くにはどうすればいいか考えるだけだっていうのをしっかり落とし込めたのが、私にとってはお芝居の勉強以上に大きい。それがすごく参加して良かったなって思う一番のところなんですよ。
オーディション行く前の心持ちだったりとか、日常生活で嫌な人に会う前の心持ちだったりとかも、割とplay roomで「なるようになる」みたいなマインドを育てられたおかげで楽チンになったなあっていうのがあるので。
三期の方には、参加してみて何か得られたらラッキーだし、得られなかったらしょうがなかったねって、それもオッケーなんじゃないかなって思います。私は変化があったんですけど、ない人がいても、そっか、ていう感じ。
まず飛び込んで合うか合わないか試してみたらどうでしょう。やめてもいいんだし。
河原:「継続的なトレーニングがしてみたいな」って思ってる人にはすごくいいんじゃないかなって思います。
やっぱりワークショップって単発が多くて、その単発もすごくいい内容とかあるんですけど、実際そこで自分が何を得て、どれぐらい血肉に出来ているかを試すことが、すぐに本番やオーディションがないと難しいと思うんですよね。実際僕も、次の本番になってみたら、あれ意外と理解できなかったのかなとか、ちゃんと自分の腹に落としきれない部分が結構あるなって事もちょくちょくあったりしたんで。
その点、play roomは18回と結構な回数やるので、ワークショップの中で得たものをすぐに何度も試すことができるっていうのがすごく良かったです。だからそういう意味で継続的なトレーニングの場として機能すると、自分の力になるんじゃないかなって思います。
小川:私はこの一年でめっちゃ芝居上手くなりましたみたいなのは分からないんですけど、やっぱり長期だからこそ、自分の新しいことを発見できるっていうのが一番大きかったです。
特にリピテーションは「一年やったからもうそれでオッケー」とかそういうものではないじゃないですか。整えるために継続していった方が良いものだから。
去年あったオーディションで、「自分緊張してるわ。でもどうやろうとか考えないで、とりあえず緊張してることを自覚するところから入ろう」と思ってやったのがすっごいうまくいって。それで受かったっていう経験がありました。これは実践的にplay roomで得たものだなって思ったし、使える道具とか知識とかすごい増えた。
あと野村さん以外にも、その場所が無いなら作ってしまうみたいな精神の人が多かったから、みんなで共有できるものが多かったのは良いことだなって。少なからずみんな同じような事に興味があって集まる人たちだし。
共演者として舞台に立たなくても、一緒に芝居のことについて考えられる仲間というか、そういう人たちと会えたのがすごくよかったなと思いました。
―――すごくいい話を聞けてとてもありがたかったです。貴重な時間をいただき、ありがとうございました。
小川 河原 青柳:ありがとうございました。
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