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play room第五期参加者インタビュー①(高見駿さん、石巻遥菜さん)




インタビュアー:青柳糸 

スピーカー:高見駿さん石巻遥菜さん

以下敬称略


用語解説

(※ マイズナー=マイズナーテクニック…自分の役柄をどうする、形をどうするということよりも、自分の身体、楽器をどうなっているかを知っていくことをスタートにする。人のことを観察していく、知っていく、そして関わっていく。そこから演技を深めていく、という考え方。まずは自分のこと、自分の身体を掘り下げて、そこから役柄を演じるというところに展開していく。)


(※リピ= リピテーション…マイズナーテクニックにおける基礎的なワーク。その名の通り、リピート(繰り返し)をする練習。相手と言葉を繰り返し、頭で考えることを排除することで、準備したものではなくその瞬間に生まれたものを大切にするトレーニング。)


(※リラクゼーション…リピテーションに入る前のウォーミングアップ。呼吸に集中しながら徐々に力を抜き、自分の身体の状態や感情の変化などを観察する。観察された身体の違和感や感情は、声を出して発散することを促される場合が多い。)



 


ーーーplay roomの二期参加者で、現在は運営アシスタントの青柳です。本日はよろしくお願いします。


お二人はplay room五期の参加者ですよね。まずはplay roomに参加しようと思ったきっかけを教えてください。シュン(※)からどうぞ。


※青柳は五期に途中から参加者として合流しているため、参加者のことを本人が希望する名前で呼んでいます。


高見:play roomのHP上に公開されていた、過去の一期から四期までのインタビュー記事を読んだことがきっかけです。ホリさんの記事を読んで「あ、行ってみたいな」と。ホリさんのお芝居は見たことはなかったけど、お名前は知っていて。 存在を知ってる俳優さんが参加していたっていうのはなんとなく信頼感があるなと感じました。マイズナーテクニックもほとんどやったことなかったし、講師の黒澤世莉さんの作品も見たことなかったんですけど。世莉さんのHPのトップに、なんだかワードがいっぱい散らばっているじゃないですか。


ーーー「黒澤世莉のよく言うこと」ですかね。


高見:そうそう。あれを見て「あー、なんかすごい面白そうだな、なるほど」と思って。きっかけはそんな感じです。


ーーー興味のある俳優さんが参加していたことや、インタビューで語っていたことが、ちょっと引っかかったんですね。マキはどうですか。


石巻:すごく好きなイマーシブシアターの団体さんがあって、一応スタッフではずっと関わり続けていたんですけど、なかなか出演ができなくて。「うわ、自分の実力不足かな」とちょっと思い悩んでいた時期だったんですよ。そんなふんわり悩んでた時期にちょうどplay roomの募集を拡散してる人がいて。大塚由祈子さんと、吉田光さんのお二人です。元々インプロの界隈で繋がっていて何回もご一緒しているお二人が「おすすめです。ぜひ!」とおっしゃっているのを見て「あ、これかな」と。


しかも1回きりじゃなくて、継続的に学べるのがいい。でも1年とかになるとなかなかスケジュールが確保できないので、 いい塩梅の長期間で定期的に稽古できる場であると。そういうところがちょうどいいなと思って応募しました。


ーーー約4ヶ月という期間は、出演の合間を縫って参加する俳優にとっては、ちょうどいいですよね。


石巻:そうですね。私的にはちょうど良かった。いい感じのスパンと、いい感じの回数みたいな。


ーーー実際に参加してみて一番最初に感じたことで、何か覚えていることってありますか。


高見:初回は、ハラスメント講習とか、マイズナーの基礎的な座学とか色々あったんですが、実際にレッスンに入ったときが一番インパクトがありました。リラクゼーション(※)の時に、結構みんながすごい声を出していて「怖っ」て(笑)


ーーーそう思う人は多いです。


高見:「あー、なんかすごいな」って。経験者の人も何人かいたっていうのもあったとは思うけど、最初からみんなそんなにできてすごいなあと。でも僕は未経験だし、別にできなくてもいいとは思っていたけど……。それにしてもやっぱり近くで知らない人がでっかい声めっちゃ出す、みたいな状況にはすごくびっくりした。


ーーー最初はちょっと圧倒されますよね。マキは何か覚えていることはありますか?


石巻:いやでも、シュンの言っていることはすごくわかる。すごい衝撃だった。「えー、そんな急にできる?」って驚いたのと、最初のリラクゼーションで、Sちゃんだったかが、1人ですごいくつろいでて(笑)。


ーーー寝転がっていましたね。


石巻:そうそう!私は緊張して、ちょっと正座みたいな感じで座っていたのに、Sちゃんがめっちゃだらけた格好でいて。


高見:うんうん、超リラックスした感じね。


石巻:それが後々は自分のヒントというか「あ、そんな風に過ごしていいんだ」って思うきっかけにはなったのですが、最初に見たときは「え?」と思いました。


ーーー「すごい失礼な人がいる!」みたいな(笑)。


石巻:いいの?!そんな。世莉さんって、なんか偉い人なんじゃないの?!って(笑)。


ーーー五期生は、前の期から引き続き参加したり、何年か空けてやっぱりもう1回参加したりする人がおそらく過去最多だった期だと思うんですね。play roomでの過ごし方をすでに理解して、結構ガンガン発言していくよ、という人がたくさんいました。そういう意味では、初めて参加した人は、「 あ、こんな感じでいいんだ」という驚きはあったんだろうなと思います。


高見:でも、リピーターのみんなのおかげで入りやすい部分は結構あった。


ーーーなるほど。回数が進んでみるとどうでした?マイズナーテクニックの基礎の部分で気づいたことや、逆にここは苦戦したな、というところはありますか?


石巻:私はほとんどすべてに苦戦していた。 私はリピテーション(※)がずっとできなくて。基本的にクソでか感情女なので、大きく感情が出た時にどう止めたらいいかよくわからなかったそれは私にとっては日常というか、演劇の創作過程でも、拳をがんばっておさめてしまうこと以外で対応策があまりないことが悩みだったんです。


正直、play roomの中で何か解決策を見出したかと言われると難しいのですが……。自分でその問題と向き合い続けて、どうしようもなくなったときにずっと世莉さんが対応し続けてくれたことがありがたかった。play roomが終わった後もそのことがなんだかずっと残ったままで、今も考え続けてます。


ーーーたとえば、世莉さんはレッスン中「声を出して。力は抜いて身体の中に残っているものを全部出して。」というような声かけを繰り返し続けていたと思います。そういうサポートは効果があったと感じますか?


石巻:そうですね。今までは無理やり押し込めて、それでもなんだか身体の奥底に残ってた、みたいな感じだったのですが、やっぱり大きな感情は消滅させようとしてもできないもので。声を出して、 身体の中から力を抜いて、リラックスさせて、大きな感情が爆発したとしても、最終的にちゃんと出し切ったらようやく次に進めるなっていうのは、 体感としては今までとは違うなと思いました。


高見:僕はワークや演技をしていて、どうしても色々考えてしまっていて。でも頭の中で考えていることや、考えちゃっていること自体、そういう自意識と仲良くなっていく実感があってよかったです。それが結構自分の中では必要なことであり、 課題でもありました。


ーーー逆に、今までは無自覚だったということですか?


高見:そうですね。考えていること自体が演技の妨げになっている、ということに気づいてなかった。


ーーー世莉さんがよく言う「頭で考えてることは練馬駅のロッカーに置いてきて」ってやつですね。


高見:あ、それそれ(笑)!


ーーーマイズナーテクニックの、自分の中の感情にフォーカスして、そのときの身体の状態を知るというような基礎を経て、実践編でシーンスタディに入っていきましたよね。戯曲はトム・ストッパードの『アルカディア』を使用しましたが『アルカディア』に対しては、 どういう付き合い方をしましたか。


高見:一人で最初に読んだ時の感想は「全くわけわからん」でした。とにかくむずかしくて、読むのもなかなか進まない。


ーーー私も同じです。あの頃は逃げ出したかったな……。


高見:初見の海外戯曲を1人で読むというのもあまり経験がなかったし。play roomでも声に出してみんなで回し読みしましたが、やっぱりわけわからん。でも読解をみんなでやるという時間はめちゃくちゃ楽しかったです。「この戯曲のここがいいよね」と興奮しているポイントがみんな違っているけど、それが自分にはない価値観で、みんなと読むとおもしろいポイントがぽんぽん見つかっていくのがすごい読解は楽しいと実感しました。


ーーー上演に向けて稽古している状況では、自分の解釈を共有したり、他人の解釈をしっかり聞いたりする時間はあまりないことが多いですよね。マキはどうですか?


石巻:私は『アルカディア』の読解をしていた期間はまるっと休んでいたんです。その頃、自分の企画の疲れが出ていたり、風邪をひいたりしていて、シーンスタディに進んでから本格的に参加しました。だから、読解としてはちょっと浅いままシーンに突入したんですけど、 色んな相手と一緒にシーンの自主練習をたくさんやっていくうちに、みんなの読解とか解釈の話を聞けて、私もどんどんイメージが膨らんでいきました。


あとすごくありがたかったのが、私の読解が浅い状態であっても、誰からも責められることはないということ。すっごい休んだし、多分みんなより全然課題もできていなかったんだけど、それはそれとして、みんな目の前の私と一緒にやってくれてだからついていけたし、解釈や演じ方やキャラの好きなところをいっぱい見出せたのが楽しかったです。


ーーーplay room本編以外で稽古場を取って自主練をする流れは、二期あたりからじわじわと伝統になりつつありましたが、五期は一番活発だったかもしれないです。継続組はやっぱりやり残したことがあり、悔しい思いをしたから再度参加を申し込んだはずなので、ガンガンやりたいことをやるぞ!という気概が随所に現れていて、アグレッシブだったと思います。


少し話が戻りますが、play roomの特徴というか、他のワークショップと違うな、と思うところはありますか?


高見:さっきマキがしばらく休んでいたという話をしていたけど、辞めたくなったらいつでも辞めて良いし、 お仕事の都合や、しんどいなあ、と思った時に休むのはもちろんOKだし……なんだろう、安全。いい意味で気を遣わずに安心していられる。あと安い!


石巻無理に来なくていいし、来なかったとしても、特になんとも思われないし、思わないですね。自分の企画を進めてて、ちょっと体力が足りなくていけません!というのも、自分で決められたのがありがたい。

あと、場を仕切っている世莉さんだけじゃなくて、みんなに発言権がしっかりあるのが、結構私は大きかったなと思っていて。その日のワークが始まる前の、みんなの日常の話がすごく盛り上がって、そこで聞くみんなの話から学んだり、得るものもたくさんあった。世莉さんはもちろん主導を取ってくれるし、話をまとめたり、場の安全性は守ってくれるんだけど、その中でみんなが発言して、play roomをどんな場所にしていこうか、ということからみんなで作っていくそれが大きな特徴かなと思います。


ーーー演劇に関係ない話もたくさんしますもんね。結構な時間を割いて。


石巻:それこそ、職場のパワハラの話とか、すっごい盛り上がったりした。


ーーー俳優以前に、人間として考えてることを、時間を使って自分で言葉にする経験って普段はなかなかないかもしれませんね。共有することでセルフカウンセリングみたいになっていくというか。もちろん相手もいて聞いてくれるし、意見も言ってくれるけど、自分でも「あれ、こう思ってたのかな。」と考えが整理されていって、モヤモヤが取り除かれていく感覚を私もすごく感じていました。


六期を開催するにあたって、こうしていった方がいいんじゃないか、という点はありますか。


石巻発表会の告知はもうちょっと早くしたかったかもしれない。


ーーー確かに!発表会の1週間前ぐらいにやっと詳細が固まったので告知が遅くなってしまいましたね。


まず、発表会を開催するのか、誰が出るのか、どういう発表形式にするのか、それから感染対策や、タイムスケジュール、衣装や美術などをみんなで話し合う時間があって、観客を入れるかどうかのアンケートもして、という流れがありました。それ、全体的にもうちょっと早目にできたらいいよね。


石巻:後から、「見に行きたかったな」と人からふんわり言われたので。


ーーーそれは残念……!申し訳ないです。


play roomのレッスンの性質上、最初は「観客に見られる」だとか、「完成したもの見せるんだ」という感覚は、きっとない方が良い。ずっと頭に「誰々さんが見に来るかもしれない」という意識があると、失敗をしにいけないというか、成果としてもったいなかったりするので、そこは結構見極めが難しいかもしれないです。でもアンケートの期限をすごく短くするとか、もう2、3日早くできれば、見たかった方がもう少し来られたかもしれないですね。なるほど、ありがとうございます。


最後に、これから参加を考えてる人に向けて何かひと言あれば。


高見:いつでもやめられるのは精神的に楽です。それこそ、今ちょっと空いてるな、とか、興味あるな、ぐらいのモチベーションでいいと思います。参加費も最初にまとめて払うとかではなく、参加した分だけ月単位で払うのでお財布に優しいやっぱり参加するハードルがすごく低いと思うから、気軽に飛び込んでも面白いんじゃないかしら


石巻:シンプルにおすすめしちゃうなあ。私はすごくいい体験だったなと思ってるから。なんか、自己責任で学べるというか、何をどれだけやるのかとか、どこまでやるのか、 続けんのかやめんのか、それこそ、さっきの発表会をどうするのかとか、人に見せたいのか……。


自分で挑みたいものを選べて、そもそも挑むかどうかも選べる。教えてもらうけど、やるかどうかは自分で決められるっていうのは、すごくいい体験だと思っています。各々が各々の挑戦を勝手にやっていて、そういう人たちがそばにいるというのもすごく刺激になると思うし、1人じゃないと感じる1人ではなんか芝居うまくなんねえな、芝居ってなんだよ、みたいに思ってるんだったら、是非ともちょっと参加してみたら何か光明が見えるかもしれない。少なくとも私は見えましたよ!


ーーー1人じゃないけど、各々勝手にやってるって、なんかいいですね。


石巻:でも応援はしてもらえます。「私今こういうことに取り組んでます」って言ったら、「いえーい!」みたいな、謎の応援が来る(笑)。「そっちはそっちで頑張って!私は私で頑張る!」みたいな。六期も、参加者がたくさん来るといいな。 


ーーーそうですね、気軽に参加して欲しいです。ありがとうございました。お疲れ様でした。


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