play room第三期参加者インタビュー②
(play room第三期は2021年7月から12月まで開催) インタビュアー:野村亮太(play room主宰) スピーカー①:小松有彩さん(play room第三期参加者) スピーカー②:奈良悠加さん (play room第三期参加者)
以下敬称略
ーーー本日はよろしくお願します。まず、play roomに参加してみようと思った動機を教えてください。
小松:直接申し込みに繋がったきっかけは、過去共演してた人のツイートだったかな。
お芝居をちゃんとやったことがなかったっていうか、部活で演劇やってたとかでもないし、何か専門とか大学とか養成所とかそういうところに入ってやったとかでもなかったから、お芝居がいいとか、よくないとかそういうロジックというか、言葉にしっかり落ちていないなって思っていて。
お芝居を長く続けたいと思っていたから、何か信じられるものを自分の中で1つ持ちたいなと思って応募しました。
奈良:私は世莉さんの「マイズナーをやってみよう」っていう単発のワークショップに参加して、これは面白いな、長くやってみたいなと思ってたら、そのワークショップに参加していた人が、play roomのことを教えてくれて。
自分は演劇をやるときに感情を使ってお芝居をするっていうのがずっとよくわからなくて、今自分がやってるやり方は、感覚でやってたりとか何か独自な方法でやってる感じがありました。
だからそれをちゃんと言語化された、メソッド化されたもので学んで、やってみたいなって思ったのがきっかけです。
ーーー初めてマイズナーをやった時はどう思いましたか?
奈良:直接台本にどうつながっていくかとかは、その1回じゃ全然見えなかったんだけど、これをやってたら自分が今まで持ってなかったものが得られそうだなっていう感じが私は確実にあった。 印象に残ってるのは、世莉さんがワークショップを始まる前に、前置きとして、「何かこれからいろんなことが起こると思うんですけど、嫌だったら嫌だって言ってください。人とくっついたりとかいろいろあるかもしれないです。」と。 私はそれを聞いたときに絶対に人に触りたくないなって思って(笑)
そんな密着したりとか絶対嫌だなって思ったのに、その日の最後のワークのときに何か抱きしめたいかもって、自分からめっちゃ抱き締めにいった瞬間があって、それがなんか面白いなって思いました。
小松:ちょっと話変わっちゃうかもなんですが、私は苦手なお芝居のタイプがある。
ただやってるだけのお芝居がすごく嫌いで、何やってんだよみたいって思っちゃうんですけど、マイズナーをやったらそういうお芝居にはならなそうだな、って気がしたんだよね。形だけのお芝居より、感情が動いてる芝居の方が面白いと思ってる。
マイズナーをやってると、そういうことにはならなそうだなって感触があったから続けられたんだと思ってます。
ーーーそのあたりは難しいですよね。言ってることも分かりますが、僕の好きな俳優さんでマイズナーは嫌いって言ってる人もいるんですよね。なので、好きなお芝居が一緒だとしても、マイズナーテクニックそのものは好みが別れると思いますし、それで全然良いと思っています。
小松:あ、そういうこともあるんだ(笑)
ーーーでは、play roomは実際参加してみてどうでしたか? 例えば、何かを達成したり、得られたものがあるって感覚はありましたか? 奈良:達成できなかったこともある。 ただ、達成はできなかったけど、ここで間違ってなかったなとは思った。自分の理想とするところまでは辿り着けなかったな、という感じだけど、今の自分の出来るところまで辿り着けたから、これはこれで良しって感じです。 だから残念だったなみたいな気持ちはなくて、自分のできるところまではできるようになったなっていう感じかな。でも、だからこそもっとちゃんとこれからも続けたいなっていう気持ちになってます。
小松:私は、play roomを始めた時に掲げた目標は全然達成できてるので、良かったです。
芝居をした時に上手くいってない時に「あ、ここがこうだから上手くいってないんだ」みたいな考え方のルートみたいなものが一つ出来た感じがします。
そういうことが出来るようになっただけでも、だいぶお芝居がやりやすくなりました。
ーーーありがとうございます。ちなみにplay roomってどういう場所だと感じましたか?
小松:play roomってすごくよくできた名づけだなって思う。 本当にplayできるroomだと思ってる(笑) 最初に世莉さんから、こういうことはやらないでください(人に怪我をさせる、自分が怪我をする)とか、嫌だなと思ったらいつやめても大丈夫ですよって言ってもらえて、心理的安全がすごく確保されたなって感じました。 ああいうことをちゃんと言ってくれるから、自由にやれたんだなって思います。
奈良:私もすごい安全な場所だな、という印象です。 それこそ演劇サークルや、他の養成所とか、ゴールに公演があると、やっぱり良い役がやりたいとか、周囲にライバル心とかが生まれちゃうこともあると思うんです。 私も過去に自分が何かを習得したくてそこに入ったのに、ある程度周りのことを気にしないといけない気持ちになっちゃったり、気に入られないといけないのかな、とかちょっと考えたりしちゃったことがあったんですけど、play roomではそういうのが一切なくて。 ただ、自分が何か学びたいことだけを学べる環境というか。 あと、なんか人が優しい(笑)
なので、誰かが成長してる時に本当に心から良かったねって思えるし、自分が成長したら周りも言ってくれたりするので、こんなに穏やかに勉強できる場所はなかなかないよな、と思ってます。
ーーーなんか褒めてる奴らしか出てなくてやばいですね(笑)
僕自身は、すごくマイズナーテクニック大好きってわけでも別にないんですよね。
play roomでやってる内容も、ここは使える、ここは使えない、みたいに結構選択はしてます。でも、それで良いと思ってるし、参加してくれた皆さんも、全部絶対モノにするぞ!みたいな意気込み方はしないで欲しいですね。やってみて、使えそうなら使ってみる、使えなさそうなら使わないでおく、ぐらいのスタンスでやってみて欲しいです。
小松:そのあたりの接し方は心地よかったな。
自発的にやるように仕向けてはくれるし、言われたことをやりましょうっていうスタンスではないです。
それに、実際やっぱり俳優って自分で考えなきゃいけないことがすごくあると思うから、その方がやっぱり得だよね。
でも、それも含めて合う人も合わない人もいるのかなとは思うけどね。
だからあれだよね、逆にやる気やめっちゃ必要だよな実は、って思った(笑) どこにも書いてないけど、やる気がめっちゃめっちゃっていうか、ちゃんとやる気ないと本当に何もなく終わっちゃうかもなっていうのは思った。
やっぱり参加すればするほど得るものがあったから、絶対にスケジュール確保するぞ!みたいな気持ちはあった方がいいかな、と。
でも、別にそれは強制されるものじゃないから、そうじゃなくてもいいし、値段も張るわけでもないから、自分の中に静かにやる気があればいいんじゃないかなって思う。
奈良:うん。自分の中にあればいいよね。
私は小学1年生の時に演劇をやる機会があって。
寒い体育館の中に座らされて、やる気のありそうな人が背中を叩かれて、叩かれた人が好きな役を出来るみたいな、だからやる気見せろよ!みたいなことを言われる経験をして。
結構自分の中には根深くそれが残ってる。
ここはそういうことが無かったので良かったです。
ーーーだいぶ嫌な思い出だね(笑)
でも、気持ちはすごく分かるな。やる気とか言われても、「それはあなたの好みでは?」って思っちゃう(笑) play roomは、複数人が参加するWSなので、どうしても一番進んでる人にカリキュラムは合わせていくけど、でもあくまでその人個人がどう変わっていくかだとは思うので、一人一人ペースが違っててもいいと思うし、そういう人を見捨てるわけじゃないので安心してください。
では、play room全体で印象的だったエピソードとかあったりしますか?
小松:印象的・・・。あ、最初の方に座学のこともやったりするじゃないですか?
最初は座学で言ってたあれ、なんだっけ・・・ってなりながらワークをしてたんだけど、だんだんワークを進めていくうちに、理論が体に入る感じになったのが面白かった。
奈良:めっちゃ自分のことで言うと、悲しいということを表に出すことが出来ないんだな、って。出来ないっていう課題に気付いた日が印象的だったかな。
それまでは、みんなが具体的に自分の課題について話してるんだけど、自分は何が課題なのか分からない状態でした。何を頑張っていったらいいか良く分からなかった。 でも具体的に、悲しいが出来ないんだって分かった日があって、そこからはどうしたら悲しいが出来るようになるんだろう、って考えるようになって取り組み方が変わりました。 取り組み方が変わって、悲しいが出来るようになったら、今度はそれをシーンで使うにはどうすればいいんだろう、ってどんどん展開していく感覚がありました。 小松:そうだ。やっていくうちに、自分が知らない間に抑圧していた感情が分かった瞬間が皆にあって、それはすごく印象に残ってるかな。 私は、すごく寂しいと思っていて、それを人に言っちゃいけないって思っているんだ!みたいな。 でも、その出しちゃいけないって思ってる感情が、その人の一番の武器にもなるんだって見てて思って。 やりたくなさそうなやつをやる瞬間って、めちゃくちゃいいじゃん皆(笑) そこが武器を探す足がかりになるんだ、って思ったし、やっぱりこれ1人じゃ絶対無理じゃんって思うし、見つけられなかったと思う。 奈良:誰かのそういう瞬間って、すごく印象的でした。 モノローグでボロっと泣いた瞬間とか、その人の殻が破れた瞬間が皆にあって。
その一つ一つが印象的でした。 ーーーさっき、奈良さんが「ゴールに公演がない安心感」みたいな話をしてくれたと思うんですが、play roomの最後に発表会はやったわけじゃないですか。お二人ともやってみてどうでしたか?
小松:私はやってくれて良かったかな。 私は学んだことを実際のシーンに生かす、統合することに苦労していたので、これをお客様に見せられる段階までもっていくには、どうやっても人の目に触れられる機会は必要だったと思う。それにそういう機会がないと追い込めなかったと思うし、現場に持っていくまでの予行演習としても、発表会はあってくれて良かった。
奈良:私もあって良かったと思う。
私が嫌だなと思うのは、ちゃんとお客さんからお金をとってしっかりと公演をすると、主役かそうじゃない人かとかそういう差が明確に出たり、公演として評価されたりしてどうしても自分の意識が公演の結果に向いちゃうこと。 さらに受かる受からないとか、残る残れないとかがあったりすると、余計に純粋な学び以外に意識が向いちゃうのが嫌でした。 play roomの発表会は、自分が出来たところまでの発表会っていうスタンスで、それがあるおかげで、自分はここまでは出来た、ここまでは出来なかったっていうのが分かったから、発表会というの名前がふさわしい会だったと思います。 外部のお客さんを入れる入れないは、個人的にはどっちでも良かったかな。 でも、発表会をやることには意味があったかな、と思います。 小松:発表会だけど、本番は本番なので全然違ってくるものもあるんだなって、良く分かったな。 今までやってきたものとは全然違う何かになってる!って思うこともあれば、集中力の切れる瞬間とかも分かったり、やっぱりみんなだけでやってる時とは全然違ったな。 そういう発見があったし、やっぱり発表会をやらないと分からなかったことがいっぱいあったので、第四期も是非やってみてほしいです。
奈良:発表会で上手くいかなかった、という失敗の部分も含めてplay roomで体験出来たのはすごい良かった。
ーーーまぁ、人前で演じるのって緊張しますよね(笑) それにplay roomも後半にいくに従って、皆にとってホームになってくると思うんですよね。長期間同じメンバーでやってる訳ですし。 でも、実際の現場で学んだことを実践するってなると、そこには結構大変なステップがあると思っていて、発表会を経ることで、耐性をつけたり、人前でやろうとすると自分はどうなるか、ということが分かると思うので、僕個人としてはやった方が美味しいと思ってます。 でも、やっぱり完全に閉じられた空間、発表会もやらないで完結する方が集中できる、という人もいるとは思うので、募集段階ではカリキュラムに入れてますが、本当にやるかどうかは期ごとに、カリキュラムの後半段階で皆に確認をとった方がいいなと思っていますし、そうするつもりです。 でも、やって良かったと言ってもらえて良かったです。
それでは、お二人とも今日はありがとうございました。
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