play room第一期参加者インタビュー①
インタビュアー:加藤唯
スピーカー:村岡佳奈さん(以下敬称略)
―――お疲れ様です。本日はよろしくお願いします。
早速なんですが、play room に参加したきっかけは何でしょう?
村岡:もともとマイズナー(※)に興味がありました。演劇をやる上で何かしらのメソッドを学んでみたいと思い、その中でマイズナーに興味を持ちました。でも、マイズナーを学べるところは少なく、高価で、続けることも難しそうでした。また、講師もどのような人なのかわかりませんでした。play roomは、講師の黒澤世莉さんを知っていたこと、料金も安価であることなど、条件がクリアできていました。
(※ マイズナー=マイズナーテクニック…自分の役柄をどうする、形をどうするということよりも、自分の身体、楽器をどうなっているかを知っていくことをスタートにする。人のことを観察していく、知っていく、そして関わっていく。そこから演技を深めていく、という考え方。まずは自分のこと、自分の身体を掘り下げて、そこから役柄を演じるというところに展開していく。)
―――世莉さんとはどこで知り合いましたか?
村岡:私は、現在は東京を中心に活動しているのですが、2017年に上京するまでは仙台で舞台をやっていました。世莉さんが「時間堂」という劇団で全国ツアーをしていた頃、地元の仙台公演に私も出演し、そこで知り合いました。
―――仙台と東京は演劇の事情に違いはありますか?
村岡:仙台は演劇の母数が少なかったので手当たり次第に活動できたのですが、東京は母数多く、何をやったらいいかわからないです。ワークショップに関しても情報が多すぎて…。
―――どうして数ある演技のメソッドやテクニックの中からマイズナーを選んだのですか?
村岡:私の場合は世莉さんともともと交流があったので、マイズナーが身近にありました。
―――他のメソッドやテクニックも勉強していましたか?
村岡:本をちょっと読む程度にはかじっていましたが、ワークショップなどでしっかりと勉強したことはありませんでした。
―――マイズナーをやってみてどうでしたか?
村岡:楽しかったです。特にリピテーション(※)をもっと突き詰めていきたいと思い、今でも知り合い何人かで集まって毎週リピテーションをやっています。
(※ リピテーション…マイズナーテクニックにおける基礎的なワーク。その名の通り、リピート(繰り返し)をする練習。相手と言葉を繰り返し、頭で考えることを排除することで、準備したものではなくその瞬間に生まれたものを大切にするトレーニング。)
―――リピテーションへの苦手意識はありましたか?
村岡:ありました。でも、初日のリピテーションで、いきなり怒りが爆発する経験をして…。リピテーションは普段出さない感情を出す練習ですが、相手がすぐ怒りを爆発させてくれたお陰で、感情を出すことへの壁が初日でなくなりました。当時は突然怒り出した相手に驚きましたが、今振り返るとこの経験が良かったと思います。
また、play roomではリピテーションの前に、毎回リラクゼーションを行いました。始めにリラクゼーションを行うことは効果的だと思い、他の場でも取り入れています。
ただ、リピテーションは危ないこともあるので、きちんと把握できる人がいることは大切だと思います。
―――リピテーションはどうでしたか?プライベートな面を出していく時もあったと思うのですが、講師の世莉さんや他の受講者とのとの距離感はどうでしたか?
村岡:リピテーションはリピテーションとしてしっかりと区別がされていました。リピテーションが終わった後は、その関係を引きずってはいませんでした。リピテーションで怒りを爆発してきた相手とも、リピテーションが終わった後は普通に映画の話で盛り上がったりしていました。
―――play roomで知り合った人と仲良くなったり、その後の繋がりなどありますか?
村岡:今でもたまに連絡を取り合ったり、公演のお知らせをいただいたりしています。
―――世莉さんはどんな教え方をしてくれましたか?
村岡:寛容で自由でした。「続けるも続けないもよし」という前提がありました。それぞれが納得のいくように取り組んでいたら良いというスタンスでした。「求めよ、さらば与えられん」というスタンスはしんどいと思う面もあるけど、自分の頑張り次第でいくらでも吸収できるし、合わなかったらしょうがないと思えます。どんな人も受け入れてくれている印象で、安心できました。
また、それを通じて、参加者同士も同じような精神になれました。来ない人がいても「なんで来ないんだよ」という空気にはなりませんでした。もちろん、しばらく来ていない人に対しては「さみしいなあ」という気持ちはありましたが…もっと話したかったなあとか、リピテーションでペアになりたかったなあとか。特に、リピテーションは組む相手よって変わるのでいろんな人と組みたかったです。
―――主宰の野村さんはどんな人でしたか?
村岡:ゆるっと、ふわっとした人です。野村さんの空気感はplay roomの和やかさに影響していると思います。違う人が主宰していたらまた違う雰囲気だったと思います。そういう点でもplay roomはおすすめです。
―――play roomに半年間通う中で、続けることがしんどいときはありましたか?
村岡:もちろん、半年通っていて、しんどいと思うこともありましたが、行ったら楽しかったです。
世莉さんの空気感のおかげで気が楽になりました。世莉さんは「無理しなくてよい」というスタンスでした。落ち込んでいたり、スイッチが入らないときは、その状態でリピテーションすることが許されていました。
―――村岡さんは、シーンスタディで使った戯曲『アルカディア』(トム・ストッパード作)を「面白い、面白い」と言っていた印象がありますが、実際どうでしたか?
村岡:難しかったけど楽しかったです。内容が深いので何回読んでも新しい発見があり、良い題材だと思います。
もともと本や戯曲を読むことは好きというほどではありませんでした。でも世莉さんに感化され、戯曲を読むことが楽しいと思えるようになりました。世莉さんがめちゃくちゃ『アルカディア』を好きで、「ここの一文がさあ…」と熱を持って話してくれました。負けず嫌いの私は「こっちも同じくらいの熱を持って返したい」と思いました。戯曲を読むことの楽しさを知ったのはplay roomのおかげです。
―――play roomで学んだことで、その後の公演や他の場で役立っていることはありますか?
村岡:play roomで学んだことで、今の演技の「何が良かったのか、何が悪かったのか」を自分で言葉にしやすくなりました。
play roomでは、毎回ワークの後にフィードバックしました。今の取り組みがどうだったかを自分で客観的に振り返ることができる良い時間でした。世莉さんは、あまりにも自分を卑下すると、言い過ぎだと言ってくれます。逆に、ポケーっとしているときは「今のはこう見えたよ」としっかり教えてくれます。自分がこう見えてるだろうと思ったことと、実際に他人から見たことの違いがわかりました。話すこと、思っていることを伝えることが以前よりも苦手ではなくなりました。
―――「いい俳優」とはどんな俳優だと思いますか?
村岡:どんなことも素直に飛び込める俳優は素敵だと思います。芝居に限らず日常でもいろんなことに素直に興味を持ち、全力で取り組める人は良い俳優になるのだろうと思います。
―――play roomのクラウドファンディングのシステムについてどう思いますか?
村岡:クラウドファンディングだからこそ、この価格設定で参加させていただいたので、俳優としてありがたいです。また、レポートを読んだり、見学に来てくださったり、目に見えて応援してくださることがわかって嬉しいです。
―――最後に、三期への受講を検討している人に一言お願いします。
村岡:迷ってるのであれば参加したらいいと思います。クラウドファンディングのシステムを使ったことで参加しやすい環境が整っています。もちろん、参加したら最後まで続けた方がいいと思うけど、play roomでは継続するかどうかを自分で自由に判断できます。
行こうかなって迷うのであれば参加してみるべきです。
―――ありがとうございました。
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