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play room 第五期参加者インタビュー②(村上美緒さん、馬上亮さん)




インタビュアー:水元 琴美

スピーカー:村上 美緒さん馬上 亮さん

以下、敬称略


【用語解説】

マイズナーテクニック…自分の役柄をどうする、形をどうするということよりも、自分の身体、楽器をどうなっているかを知っていくことをスタートにする。人のことを観察していく、知っていく、そして関わっていく。そこから演技を深めていく考え方。まずは自分のことや自分の身体を掘り下げてから、役柄を演じるところに展開していく。


リピテーション…マイズナーテクニックにおける基礎的なワーク。その名の通り、リピート(繰り返し)をする練習。相手と言葉を繰り返し、頭で考えることを排除することで、準備したものではなくその瞬間に生まれたものを大切にするトレーニング。


安心してトライできる学びの場を求めてplay roomに

―――美緒さんは三期から、馬上さんは四期から継続してplay roomに参加していますが、最初に参加を決めた背景を教えてください。


村上:学びたい欲が高まっていた時期と、三期を募集していたときがちょうど重なっていたからです。俳優研究所を出て数年間、現場経験を重ねながら少しずつ自信が持てるようになってきた一方で、まだまだ周囲に支えられすぎていると感じていたころでした。


現場で学べることはもちろんたくさんありますが、当時は「いつまでも共演者やスタッフに支えられているだけではダメだ」と感じていて。現場で出会う先輩方と対等に渡り歩くためにも、自分一人で戦える力を付けられる学びの場が必要でした。


とはいえ、学べる場所ならどこでもいいわけではなくて、自分が安心してトライできる場所で学びたいと考えていました。


そんなときに、世莉さん(play room講師: 黒澤世莉)の戯曲読解ウェビナーを受けたんです。画面上で一度お会いしてなんとなく世莉さんの雰囲気を知れたことと、過去の参加者がオススメしていたこともあってplay roomへの参加を決めました。


馬上:僕は業界内でも有名な世莉さんからマイズナーテクニック(※)を学べること、安価で継続的に開催されていることに惹かれて参加を決めました。


ずっと「良い役者」になりたくて、ほかのワークショップに参加したり本を読んだりと勉強を続けていたところ、マイズナーテクニックに興味を持ったんです。僕も、世莉さんと会ったことがある事務所の先輩から話を聞いて、play roomの雰囲気や進め方を事前に調べてイメージをつかんでいました。


―――お二人とも入念なリサーチを経て参加を決めたんですね。


村上:単発のワークショップと違ってplay roomは多くの時間を費やすことになるので……。「なんか違った」はできるだけ避けたい気持ちでした(笑)。


一人ひとりの“登山ルート”が尊重される空間で、自分の変化と向き合えた


―――実際にワークを経験して、どんなことを感じましたか?


村上:「こんなにできないものなのか」ともどかしい気持ちでした。マイズナーの基本である「自分を認める」ことに対して、自分で制限をかけてしまうことが多すぎて……。


とくに最初のうちは「正しくやらないと」や「失敗したらダメ」と自分自身に呪いをかけていたので、1つずつほどいていく時間が必要でした。ほしいものを絶対に手に入れるために学ぶ熱量はあっても、空回りしている時期が長かったように感じています。


―――世莉さんの考え方は「トライこそ優勝!正しくやらなくていい」でしたね。最初の美緒さんと真逆のスタンスですが、世莉さんとはどのように向き合っていましたか?


村上:ワークに取り組み始めたときは、自分のことに精一杯で世莉さんの考え方を気にする余裕すらありませんでした。でも、世莉さんが一方的に教えてくれるスタイルではなくて、こちらから掴みにいくスタイルだったので、求めた分だけ手に入る安心感がありました。

 

play roomにはそれぞれ違う山を登ろうとしている人たちがたくさんいて、まわりに目標や努力の量を合わせなくていいのが居心地が良かった。いくら空回りしていても、結局みんな自分と戦っていて余裕がないから、まわりの目を気にしなくていい空間なんです。


馬上:僕も最初はマイズナーのワークを苦手だと感じていました。リピテーション(※)がスタートした瞬間からとにかくまわりがうるさくて! リピテーションに取り組むみんなを一歩引いた目で見てしまう自分がいて、疎外感を抱いていました。


世莉さんのスタンスで良かったのは「やってみてどうだった?」とまず参加者に聞いてくれるところです。「君は〇〇だね」とジャッジされることも多いなかで、新鮮でしたね。


美緒の言葉を借りると、「講師や演出家とも違う山を登りたい」ときもあるじゃないですか。世莉さんやまわりのみんなが自分の登山ルートを尊重してくれることがうれしかったです。


あと、ワークのあとに一人ひとり丁寧に振り返る時間を設けてくれているのも良かった。予習をしてきた分だけ適切なフィードバックをもらえるので、準備が自分の成長につながる実感を得られました。


―――“それぞれの登山ルートが尊重される空間”、まさにplay roomを的確に表現した言葉だと思います。お二人にとって、play roomはどんな場所ですか?


村上秘密基地かな。play roomは学びたい気持ちさえあれば、何度でも受けられるんです。ワークやキーワードなどの内容は毎年ほぼ同じですが、自分自身が変わっているので、毎回得るものが違います。年をまたいで継続して参加できるからこそ成長できる部分はありますね。


馬上:安心感がある場所ですね。クラスの冒頭で円になって近況をシェアしたり、みんなに質問をぶつけたりする時間があるんです。悩みやモヤモヤした気持ちを、解決しなくてもいいから一旦置いておける場所があるのはそれだけで救われる人がいると思います。


村上:五期の初回のハラスメント研修も良かったよね。三期、四期も安全な創作現場について考える機会はありましたが、五期のように専門の講師をお招きしたのは初めてでした。


トップダウンで決められた空間ではなく、自分たちで場を作れる安全性や自主性が尊重されていることを実感しました。


―――ほかの参加者の感想でも「みんなで場を耕していく感覚がうれしかった」とありましたね。play roomに参加する前と今を比べて、ご自身の変化はありますか?


村上:俳優としての自分を愛せるようになりました。三期のころは誰かに褒めてもらっても、素直に受け止められなかったんです。「本当の自分はそんなにうまくない」とか「私が素晴らしいのではなく、私の魅力を引き出してくれるまわりがすごいだけ」とか、とにかく俳優としての自分に自信がなかった。


でも、play roomで「自分が望むものを3年かけて本気で掴みにいった」という実感を得られてからは、「“俳優・村上美緒”には十分魅力がある」と心から思えるようになりました。


馬上:僕は以前よりも人の話を聞くのがうまくなったかな。先ほども触れたように、play roomは振り返りの時間が長いので、自然と聞く習慣が身に付きました。それはほかのみんなも同じです。自分の話もじっくりと聞いてくれるから、話すこともラクになりました。


―――馬上さんはplay roomを経て、アクティングコーチにチャレンジしたいと思うようになったそうですね。


馬上:四期から五期にかけて、何十人もの変化を間近で見てきて、「人の成長に立ち会うことはこんなにも楽しいんだ」と実感したんです。誰かの課題や成長ポイントを発見するのもおもしろいし、自分の発見と世莉さんのアドバイスが一致していると「やっぱり!」とうれしくなります(笑)。






続けることもやめることも戻ることも選べる。「気になったら飛び込んでみて」


―――自分の成長のための場所でありながら、まわりから得る気づきもたくさんあったんですね。最後に、play roomはどんな人に合っている場所だと思いますか?


馬上:琴美(インタビュアー)みたいな俳優が来てくれるといいんじゃないでしょうか。


―――と、言いますと……?


馬上:五期・最終回直前の振り返りの時間に、琴美が「自分はまわりの大人からはおとなしい人間だと言われてきたけど、実は内面にはこんなにも大きなエネルギーがあるんだと気づいた」と言っていたことが印象に残っていて。


自分の内面にフォーカスできる場所なので、現場でもっと大きな感情と出会いたいと思っている人にオススメしたいです。


―――結果、まわりから見てもplay roomが自分にぴったりの場所だったとわかったのはうれしいです!……とはいえ、そもそも「もっと大きな感情が自分のなかにあるかも」と最初から気づける人は少ないのではないでしょうか。


村上:具体的には、演出家やコーチから「もっとできるよ!もっとあるでしょ!」と言われている人や、稽古では出なかったエネルギーが本番で出るタイプの人が当てはまるんじゃないかな。自分で感情の通り道を理解はできていないけど、きっかけさえあれば大きな感情を出せそうな人のイメージです。


馬上:まさにその通り……!


村上:私は変わりたいと思っている人がplay roomに合っている気がします。私自身もそうだったように、現場やレッスンで同じことを指摘されていて、自分で変えたいと思っているけどうまくいっていない人にオススメしたいです。


合わなかったら途中でやめたらいい、合わないまま続けてもいい、やめたけど戻ってきてもいい、とにかく自分で選べる場所です。少しでも気になったら、まずは飛び込んでみてほしい!



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