play room 第五期参加者インタビュー③(米山涼香さん、渡邉理衣さん、野々村すずかさん)
インタビュアー:青柳糸
スピーカー:米山涼香さん、渡邉理衣さん、野々村すずかさん
用語解説
(※ マイズナー=マイズナーテクニック…自分の役柄をどうする、形をどうするということよりも、自分の身体、楽器をどうなっているかを知っていくことをスタートにする。人のことを観察していく、知っていく、そして関わっていく。そこから演技を深めていく、という考え方。まずは自分のこと、自分の身体を掘り下げて、そこから役柄を演じるというところに展開していく。)
(※リピ= リピテーション…マイズナーテクニックにおける基礎的なワーク。その名の通り、リピート(繰り返し)をする練習。相手と言葉を繰り返し、頭で考えることを排除することで、準備したものではなくその瞬間に生まれたものを大切にするトレーニング。)
(※リラクゼーション…リピテーションに入る前のウォーミングアップ。呼吸に集中しながら徐々に力を抜き、自分の身体の状態や感情の変化などを観察する。観察された身体の違和感や感情は、声を出して発散することを促される場合が多い。)
―――3人とも五期の参加者ですね。私も途中からクラスメイトとして皆さんと共に過ごしたので、その時の呼び方でインタビューを進めさせていただきます。まずplay roomへの参加を決めた背景を教えてください。
米山:きっかけは大きく分けて2つあって、 1つは私自身が養成所などに通った経験がなかったので、一度しっかり体系的に演劇を学びたいと思っていたことです。 もう1つが、周りの演劇人からすごく評判が良かったこと。
過去に何度か共演して信頼している方から「play roomはとてもいいよ」という口コミを聞いて、じゃあここにしようかな、と参加する決め手になりました。
―――Xなどネット上の口コミではなくて、リアルのご友人からの紹介なんですね。
渡邉:私は信頼している俳優仲間が五期の募集開始を告知しているのを見て、その方に「私でもいけるかなあ」とメールで問い合わせをしてみたんです。そしたら「受講料安いし、辞めたくなったらすぐ辞められるからチャレンジしてみたら?」と 背中を押してもらいました。私はネガティブな感情を出しづらかったり、 演技しながら色々頭で考えてしまうことを課題にしていて、このマイズナーテクニックというものなら、少し前に進めるんじゃないかと感じて選びました。
マイズナーのことはそれまで全く知らなかったので、1回目のクラスが始まる前に軽く調べただけです。
野々村:私は、play room参加の前年に黒澤世莉さんのワークショップを単発で受ける機会がありまして、自分の中で制御していたものが、ペリッ、と少し剥がれたように感じたんです。その時は時間も短かかったので、その先を見られずに終わってしまったことがちょっと残念だなと思っていて。
その後play roomのことを知り、ぜひ参加したい!と募集開始を待っていました。ただ、スケジュール的に私の都合がつくか怪しくて、受けるかどうか直前まで迷ってたんですけど、HPの記載にもあった通り、もし行けなくなっても別に責められるわけじゃないと感じたので飛び込んでみました。
―――参加してみて、クラスの最初の印象はどんなものでしたか。
米山:私は、初回はどうしても用事があって途中参加になってしまったんです。
それまで参加してきたワークショップだと、遅れてしまったらまずその場の偉い人に「申し訳ございません」と言いながら入って、みたいな流れが当然あると思うんですが、ここはなんだかそういう雰囲気ではないなと感じて。
うまく言葉にできないのですが、「あれ、私がこれまで知っている秩序とは違う秩序で動いているところだぞ」と思ったんです。自分の中に違うものが流れ込んできた、という印象でした。
野々村:以前、世莉さんのワークショップを受けた時は、色々な講師の講座を複数受けられる場だったので、全員がマイズナーに興味があるというわけではなくて、短い時間で共通認識を作るのが難しかったんですけど、play roomの場合はもちろん皆さん興味を持って集まってる人なので、話していて割と似ているというか、同じことに興味を持ちやすい人たちが集まってるんだろうなと感じました。
扉を開けたら別の次元というか、ちょっと現実から離れたような穏やかな空間な気がして。
―――「扉を開けたらそこは」って、なんだかジブリみたい。
野々村:あるじゃないですか。なんか空気がちょっと澄んでいるというか、薄水色。緊張感はあるけど、リラックスできる心地良さがあって。私はそんな感覚がありました。
渡邉:世莉さんの第一印象は、すごいチャーミングな人だなと感じました。最初30人ぐらい人がいたと思うんですが、タブレットと本人を交互ににらめっこしながら、「誰さん、誰さん」って全員の名前をちゃんと覚えようとしていて。参加者一人一人を受け入れようとしてくださってるし、場の空気もすごくいいな、 嬉しいなと感じました。
―――リピテーションをはじめとした基礎、戯曲の読解、そしてシーンスタディという流れでクラスは進んでいきますが、その中で印象に残ったことはありますか。
渡邉:私、リピテーションが初めてだったんですけど、 継続して参加している人も何人かいたので、大きな声で叫んでたり、泣いていたりとかしていて・・・。ああいう風にすることが 正解というか、自分もああならないといけないのかなと思って、 最初すごく怖かったんですけど、後々そうではないということも理解しました。
―――りーさん(渡邉)は最終的に、リピテーションをどのように捉えたのでしょうか。
渡邉:ある日、たまたまペアになった方と凪のように穏やかなリピテーションになったことがあって、世莉さんからのフィードバックの時に「もちろんそういうリピもあるんだよ」とちゃんと伝えてもらったのですごく安心しました。リピテーションは無理やり大きなことをやらなきゃいけない、 何か引っ張り出さなきゃならない、というような変な気構えはなくなりました。
―――なるほど。お二方はいかがですか?
米山:1番しんどかったのは読解の時間です。『アルカディア』という戯曲は、やっぱり今思い出してもめちゃくちゃ難しい。
私は元々小説が好きで、普段から文章を読む習慣はあったのですが、戯曲を読む、という作業は小説とは全然違う脳みそを使うんだと知りました。最初なんて、ただあらすじを追うだけになってしまって、みんなでここが面白いね、なんて話している輪に自分が入れなくて、奥歯がギリギリ鳴ってたのを今でも覚えてます。
「私は小説好きだから、物語や戯曲を人一倍楽しめるぞ」というプライドもあったし・・・。
―――「俳優たるもの、お話がわかりません、なんて言えない」と思ってしまいますよね。
米山:でももし、今読解をもう1度やるとしたら、もっと柔軟にやってもよかったのかなって。例えば、何度も読み返しても全然頭が働かない時は、その辺を散歩しながらキャラクターのことを考えてみるとか。
そんな風に、学び尽くそうとか、読み取ってやろうとは思わずに、自分のいろんなところを使って味わうように読んだら、あんなに苦しくなかったんじゃないかと思います。自分が考えていることやわからないことを、素直に認めて表現していいんだよ、という場だったはずなのに、あの時期は確実に自分を大きく見せてたなと思いますね。
野々村:私は、読解の期間にあまりクラスに参加できなかったので、その先のシーンスタディの方が苦しくて。読解が追いついていないまま演じる段階に入ったので、勝手にすごく焦ってしまって。
その時、ペアで組んだ相手役の方に、「自分の時間とリソースの中で優先順位を決めて、もうやってない所は潔く諦める。しっかり取り組めたところに集中したらいいと思う。自分から見たら全員パーフェクトに見えるけど、みんなそうではないんじゃないかな」と言ってもらえて、すごく救われました。
渡邉:『アルカディア』ではハンナという役をやったのですが、自分に似ている部分もあるし、全然こんなこと思わない!とギャップを感じる部分はあったのですが、相手役の方に「私、このセリフをなんで言ってんのかわかんない」みたいなディスカッションにずっとつきあってもらって、理解がどんどん深まって大好きな役になりました。
米山:たしかに同じ役柄の人が何人もいて、解釈を互いにシェアするというのは実際の舞台の現場だとなかなかないですよね。練習の時点で相手役もどんどん変えたり、なんなら配役も変えて練習してみたりとか、そういうのが自由にできるのが結構良かったです。
―――これは予め了承をいただいたのでお伺いするんですが、りーさんは息子さんも俳優をされていて、五期は親子で参加されてたんですよね。私は結構長い間全然気づかなくて。
渡邉:一度も親子ですっていう紹介はなかったんです。でも参加者に親子だということをそもそも知っている友達がいたので、なんとなく伝わっていった感じ。あまり詮索もされず、ナチュラルに認められていて嬉しかったです。息子とワークについて話したりしながら帰りました。
―――家族だけど、学び合う相手というのは素敵な関係だなあ。
渡邉:息子は六期も申し込みたいと言ってました!
―――大歓迎です!それでは最後に、参加を考えてる人に向けて何か一言あれば。
米山:play roomは演劇のカウンセリングのような側面があると思っていて、羽ばたきたいんだけど、何かが枷になってしまってる人にとっては、すごく有意義だと思います。
でもキャリアを積みたいとか、テクニックを大きく向上させたいなど外側に目標があると、少しもどかしいというか、趣旨がずれてくるかもしれない。 私が参加当時、内側に課題があったのが、今は外側に目標が出てきたので、多分来期は参加しないと思います。 だけど、またキャリアを積んでいくうちに、内側に自分の目を向けたいって思った時には、ひょっとしたら参加するかもしれない。
野々村:play roomは自分のペースで自由に参加できる、というのは前提として。 私の場合はスケジュールとかをきちんと確保できるかわからない状況で、お休みも挟みながら参加したので、得るものはもちろんあったけど、やっぱりちゃんと集中できる状態で参加できた方がより勉強できたし、もっと楽しかっただろうなと痛感してるので、参加を考える方は、できるだけ調整できるところは調整して、そこにちゃんと時間を注ぐといいのかなと思います。気力までは注ぐのが始めは大変なら、時間だけは注ぐって決めてみるとか。
渡邉:私がお伝えしたいのは、人生に対する考え方から根本的に変わったということ。
それまでは俳優をやりながら、主婦も母親も完璧にこなさないといけないと思っていたのが、ある程度自分を許せるようになった。自分に100点が出せるようになったし、そもそも0、100じゃなくていいんだなと。自分の生活スタイルの変化が、演劇にもすごくいい流れを作ったなと私は思っていて。
今はもう、家族のうちの50パーセントが、play roomイズム。「ごめん、これ今日できなかった!」なんて言っても、「オッケー、そう言う日もあるよね。でも、そこまでやったんでしょ。優勝優勝!」って労い合う空気があったりとか。なので、すごく 生きやすくなりました。
―――すごく良い変化!そういう話を聞けたのも嬉しいです。
渡邉:今回は、アシスタントにも手をあげようかな、なんて思ってます。
―――ぜひ!運営も人数がギリギリで・・・(笑) 過去の参加者がアシスタントについてくれると、来期からの参加者も安心する場面もあると思います。
渡邉:じゃあ、また会えるかも。
―――会いたいです。ぜひ。
お疲れ様です。ありがとうございました。
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